やさしいマスターと赤い看板が目印: 「オーレ」 のトンカツ

やさしいマスターと赤い看板が目印: 「オーレ」 のトンカツ

私の大好物はなんたってトンカツである。今回は気のいいマスターが丁寧に揚げるトンカツの名店「カツハウス・オーレ」を紹介しよう。杉本町のメインストリートにくっきり映える赤い看板の店を構えて 10 年以上が経つ。店名の「オーレ」はマスターの飼い犬の名前である。
大阪市大の学生なら知らない者はいない有名店だが、地元住民にも愛され、ランチタイムはこの店のトンカツを求める客が引きも切らずに詰めかける。テイクアウトも可能なシステムを完備しており、常に盛況の状態が続く。トンカツを揚げるのはマスター1人が担当しているため殺人的に忙しいはずだが、マスターはいつもにこやかにやさしい笑顔を客に投げかける。一方で、油と豚肉に注がれるマスターの目は厳しい。「カウンター2番さん、定食あがります」という業務連絡以外ムダ口を一切たたくことなく黙々とトンカツを揚げまくる。

(写真 1) ひときわ目を引く派手な看板

(写真 2)奥がマスター。にこやかに撮影に応じてくれた

とにかく安い。定食 A、B、C の三種類はいずれも 680 円。たとえば A 定食は、一口カツ三枚にエビフライ一尾に加えてポーク照り焼きがつく。B 定食のメインはチキンカツ、C 定食のメインはミンチカツ(メンチカツとは呼ばない)となっている。他にも定食のバリエーションは豊富だが、私のオススメは絶対にカツ丼とカツカレーである。どちらも 500 円という破格値。しかも大盛無料が泣けるほどうれしい。
私は東京でも名店と呼ばれるトンカツはほぼ食べつくしており、選球眼にはちょっとした自信があるが、このクオリティのカツ丼とカツカレーが 500 円で食べられるのは驚きである。まずカツ丼だ。もちろんカツはうまいが、私が好きなのはこの店の甘めの出汁である。絶妙の半熟状態にある卵を冠した白米に出汁はややたっぷりめに注がれており、トンカツに行く前にまず卵とご飯でこの出汁を味わいたい。口に入れるとなぜかほっとする味である。何の抵抗もなく口の中になじむ甘い出汁を確認してからカツにとりかかる。
同様にカツカレーもルウがいい。本来、カツ丼とカツカレーは明確に違いのあるアイテムであって、カツ丼の気分の日とカツカレーの気分の日に分かれるはずである。ところが、私としたことがオーレでは常に席に座るまでカツ丼にするかカツカレーにするか決められない。それほどにカツカレーの存在感とカツ丼に対する対抗感を覚えさせるのがオーレのカツカレーである。ルウは煮込んだせいかほとんど具はない。なのにサラサラ。
しかも濃厚。甘さと辛さがほどよく調和し、カツとからみまくる。

(写真 3) カツ丼 500 円(大盛)

(写真 4)カツカレー500 円(大盛)

カツカレーの皿の中の配置が特徴的である。カツの上にどばっとルウがかかっているのではなく、白米の上に少し細めに切ったカツが乗り、白米がダムの役割を果たすかのようにルウがこれでもかとたっぷり満たされる。したがって、カツと白米とルウの量を自分好みに調整しながら味わうことができる。最初はちょっとだけルウをつけてご飯を主力にしたり、中盤から遠慮なくカツをルウに浸して思い切りカツカレー感を試すなど自由自在の食べ方ができる。カツ丼もカツカレーも定食のカツよりやや細めに切っているところがうれしい。
言い忘れたが、カツ丼とカツカレーをオーダーすると真っ先にキャベツの千切りサラダが供される。「今日はカツ丼が行くぞ」と自分の胃に言い聞かせながらテーブルの上にある和風ドレッシングをかける。ドレッシングは油が分離しているので、フタがきちんと閉まっていることを確認したうえで慎重にシェイクしよう。

(写真 5、6) この日のヤナギーはカツカレー、ハルは王道のロースカツ定食でした。二人ともいい笑顔です。

あえてひとつだけ難を言わせていただくとすれば、このサラダにぶつ切りのきゅうりが二切れ添えられていることくらいだろう。ただし、私がきゅうりを苦手であることを知っているゼミ生は「失礼します」と言ってすぐに私のサラダのきゅうりをひょいと箸でつまんで自分の皿に移してく
れる。ありがたや。

本稿は大阪市立大学商学部宮川研究室ウェブサイトで展開している「宮川ゼミくいだおれ ガイド」に掲載されたものです。

本稿における観察及び意見は宮川壽夫の主観による個人的見解であって大阪市立大学の考えを代表するものではありません。
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