企業の広告活動と企業価値に関する実証研究~企業属性によって異なる広告宣伝効果~

論文要旨

本研究は、企業の広告活動による企業価値への影響を、企業属性というファクトを通して解き明かすことをテーマとした実証研究である。本研究における企業属性とは、すなわち B to C 企業か B to B 企業かということであり、本稿では B to B 企業における広告活動に対して批判的に論理を展開する。分析の結果、B to B 企業の広告活動は企業価値に影響を与えず、一方で B to C 企業の広告は優位に正の影響を与えることを実証した。

本研究では仮説を「B to C 企業の広告活動は企業価値を増大させ、B to B 企業の広告活動は企業価値を毀損させる」と設定しパネルデータ分析をおこない、同時に前提確認のために「企業の広告活動は企業価値を増大させる」という仮説のもと、対象サンプル全体での分析もおこなう。

本研究では重回帰分析による統計的な実証方法を用いる。モデル式は被説明変数に企業価値の代理変数であるトービンの Q、説明変数に広告宣伝投資の代理変数として総資産広告宣伝費率をおき、コントロール変数として総資産自然対数変換値、売上高成⻑率、総資産営業利益率、総資産研究開発費率、業種ダミーを設定している。

研究対象は東京証券取引所上場企業のうち 2009 年から 2018 年の 3 月期に広告宣伝費およびその他研究に必要な勘定科目を全て開示している企業で、東証業種分類における銀行業・証券、商品先物取引業・保険業・その他金融業を除いた 258 社、1016 サンプルである。さらにこの 258 社を B to C 企業群と B to B 企業群に分けて、パネルデータ分析をおこなった。

分析の結果、B to C 企業群ではトービンの Q と総資産広告宣伝費率の間で優位な統計結果が得られた一方で、B to B 企業群では被説明変数と説明変数の間では優位な統計結果は得られなかった。これは「B to C 企業の広告宣伝活動は企業価値を増大させ、B to B 企業の広告宣伝活動は企業価値を毀損させる」という仮説が部分的に支持されたことを示している。B to B 企業群では被説明変数と説明変数の間で、統計的に優位に負の相関は得られなかったものの、統計的に優位でなかったことや係数が負であったことから、少なくとも投資家は好意的な評価をしていないことを示すことができた。また前提確認のために「企業の広告活動は企業価値を増大させる」という仮説のもとで行なった検証から、企業の広告活動は企業価値を増大させることがわかった。

あとがき

本論文は宮川ゼミの同期、先輩、後輩、そしてなにより宮川先生のご指導をいただいて作り上げた論文です。改めてここに感謝の意を表したいと思います。

まず、宮川先生には 2 年半に渡って勉学にとどまらず、あらゆる物事に関してご指導をいただきました。学問とは因果関係を説明することである、という宮川先生の学問に対する見方が明確だったからこそ、先生のもとで学ぶことに惹かれたのだと思います。もともと大学時代は学問に時間をかけようと決めていた私ですが、そもそも大学で行われる勉強とは何なのか、何を勉強したらいいのかといったことは何も考えていませんでした。そんな時に宮川先生の講義を受けて、他の教授とは違う授業に対する姿勢や学生が勉強をすることの意義を説いている姿を見て、宮川ゼミの門を叩くことを決めました。2 年半の間、宮川先生のもとで学んできましたが、卒業を控えるいま、改めてその当時の判断は正しかったと感じています。科学的思考論やコーポレートファイナンス理論はもちろんのこと、社会人としてのマナーやいい意味での学生らしさといったことも先生から学びました。なかでも就職活動に際し先生がおっしゃった「その仕事が自分に合っているかなんてわからない」という言葉は印象的です。これから⻑い時間を費やす仕事を決めるという段階で、この言葉は衝撃的でした。決して「合っているかわからないから、いい加減に仕事を決めて良い」ということではなく、「仕事が合うとか合わないという姿勢でいると、いつまでたっても自分の仕事を見つけることができない。働いたとしても思い通りにいかない時に簡単に諦めてしまう。」というメッセージだと私は受け取りました。この言葉は、就職活動をしていた当時はもちろん、おそらくこれから仕事をしていく上で身に沁みる言葉だと思います。

また、この 2 年半の間、切磋琢磨しあったゼミの同期にも感謝しています。思い返してみると楽しい思い出しかありません。人間、嫌なことは忘れるようにできていると言いますが、ここまで嫌なことを思い出さないということは、おそらく本当に楽しい 2 年半だったのでしょう。時には意見が割れることもありましたが、あくまでも建設的な議論の上で主張をしあうことができたのは、宮川ゼミの 6 期生だからだと思っています。特に 3 回生のときに企業分析レポートと CORE 論文を共に書き上げたチームは最高でした。あのチームは自分の足りないところを、お互いに補い合えるチームでした。ときにはチームメンバーの発言や能力の高さに嫉妬することもありましたが、それはそれほど尊敬のできる同期であったからです。だからこそ卒業論文では誰よりもクオリティの高い論文を書き上げたいと思いましたし、実際に論文執筆にのめり込むことができました。

宮川ゼミの先輩、後輩にもここで謝意を申し上げます。まず先輩方には普段から後輩として可愛がっていただきました。卒業論文にあたっても、テーマ設定の際に 5 期生の先輩方が私の研究テーマを「おもしろそう」と評価してくださったことが心の支えになり、最後まで諦めずに研究を続けることができました。そして 7 期生はいつも身近にいて 6 期生を支えてくれていた存在です。自覚はないかと思いますが、学情に行けば必ず 7 期生がいるという状況は、一人で卒業論文を書く 6 期生にとっては非常に心強いものでした。同時期にチームで論文を書き上げている後輩には、ときに頼られ、またときに頼りながら勇気付けられました。また 6 期生と 7 期生が唯一、一緒にチームを組んで活動したディベート大会は私にとって非常に大切な思い出です。頼もしい後輩たちがいたからこそ、毎日のようにディベートの準備をしても苦ではなく、楽しい日々になりました。本当にディベートはチームメンバーに恵まれたと思います。

またこの場を借りて両親にも感謝の意を述べたいと思います。地元から遠く離れた大阪の地で 4 年間勉学に励むことができたのは、支えてくれた両親のおかげです。大学に入学するまでは、山梨を出て一人暮らしをすることにしか目が向いていませんでしたが、大阪に来て初めて、帰る場所があるということが有難いことであると実感しました。両親が支えてくれたこの大学生活で、多くの経験をして成⻑することができました。ありがとうございました。

最後に、卒業論文執筆を終えての感想を認めて卒業論文の締めとします。本論文が私にとって納得したものになったのは、ひとえにテーマ設定の時期が早かったことに要因があるのではないかと思っています。テーマ確定の時期からまるまる 1 年間同じテーマで卒業論文に取り組んできました。途中で行き詰ったときにテーマ変更が頭をよぎりましたが、前述のように 5 期生が「おもしろそう」と評価してくれていたことを心の支えにして、最後まで広告研究を続けることができました。テーマ設定の段階で研究として成立するかどうかはあらかた予測をつけていたので、変な方向に迷走することはありませんでしたが、仮説設定にあたり理論を背景にした論理構成を作ることには頭を抱えました。正直、大したアイデアもなくデータ分析を始めてしまっていたので、なぜ B to B 企業の広告は良いあるいは悪いのかという部分の説明に不安を抱えていました。そのときに解決の糸口を見つけてくれたのが、外でもない宮川先生です。先生に相談に行ったときに仮説設定で悩んでいることを伝えると、いくつかアイデアを出していただき、それをもとに仮説の論理構成を作成しました。理論を背景に持った仮説ができたことで、途端に私自身がこの研究に対して自信を持つようになり、論文に対して愛着を持つようになりました。そうした理論に基づいた仮説を始め、良質な素材を集めることができたからこそ、執筆を開始してからも飽きることなく継続的に論文を書き続けることができたのだと思います。論文執筆はクリエイティブな作業です。どのような素材を集めるのか、その素材をどのように組み上げるのか、組み上げた素材同士のつなぎは滑らかであるかを考えながら書き上げる作業は、あたかも小学校時代の図画工作をやっているかのようなワクワク感に満ちていました。これから卒業論文を書く後輩たちも、楽しみながら論文を執筆してくれたら幸いです。

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