リスクが高いと価値は低い ~証券市場線を理解するために【宮川】

最近はリスクという言葉を意外と日常的に気安く使うようになっています。この前エレベータで隣に乗り合わせた学生同士が「教科書持ち込み不可の授業を履修するってめちゃリスク高いやん!」と話してたみたいに(ホントにリスク高いかどうか知りませんけど)。昔はそこまで安易に使用される言葉ではなかったような気がします。英語の辞書を引けば出てくるとおり、多くの人は「危険性」や「恐れ」という意味で使っている言葉です。しかし、ファイナンス理論では異なります。

そもそもなぜリスクがあるのか。人はなぜ危険や恐れを感じるのか。結局それは将来のことがわからないからです。株式を買うにしても事業を始めるにしても、うまくいく場合もあれば、うまくいかない場合もあります。その結果に違いがあることを知っているから危険や恐れを感じることになります。そして、われわれが危険や恐れをより強く感じるのは、うまくいったときの結果とうまくいかなかったときの結果の差がより大きいときです。成功した場合の結果と失敗した場合の結果に困るほどの差がなければ我々はリスクだなんだと騒ぐことは比較的少なくなります。つまり、リスクとはうまくいく結果とうまくいかない結果、要するに起きる結果のばらつき度合のことだと言えます。

時としてわれわれはそんなリスクの高いものに挑みたくなること、または挑まなければならないことが宿命的にあります。それは高いリスクには高いリターンが期待できるからです。しかし、もしできることなら低いリスクで高いリターンを得たいと虫のいいことを考えてしまいます。逆に、高いリスクを取ったのに低いリターンしか得られないと「骨折り損のくたびれ儲け」などと言ってガッカリします。このようにわれわれはよほどの変人でない限り、リスクよりリターンが好きです。人はだれでもなるべくリスクを避けてリターンを得たいと考えます。

だから、たとえば、もしもある株式のリスクが高いと言われたら、そこには高いリスクに見合うだけの高いリターンを求めないと、その株式を買う人はいなくなります。リスクが高い株式のリターンは高いはずです。リターンが高いということは、現在の価値が低いために将来の値上がり幅が大きいということを意味します。つまりリスクが高い企業の株価は相対的に低いということになります。

逆に、もしもある株式のリスクが低いと言われたら、だれもがその株式に投資したくなります。だから現在の価値は相対的に高くなるはずです。現在の価値がすでに高いということは将来の値上がりは限られるのでリターンは低いことを意味します。つまりリスクが低い企業の株価は相対的に高くなります。

リスクが低いものは誰もが好むので価値は高く、リスクが高いものはだれもが嫌うので価値が低い。ファイナンスが企業の価値すなわち株価というものを説明する際の基本的な考え方ですが、一般的にはもっともわかりにくいところですね。

リスクが高いと価値は低い ~証券市場線を理解するために【宮川】 への1件のコメント

  1. 西山花恵

    今日のゼミはいつも以上に頭を使い、難しかったなあと感じていましたが、このブログを改めて読むと、株式のリスクと現在価値の内容が以前よりすんなり理解できて、先生がおっしゃっていた頭良くなった気分を味わえました!

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