卒論とはなにか?(2) 研究方法の種類を知っておこう

2.研究方法の種類を知っておこう

独創性と新規性がない論文は書くだけ時間のムダ?

さて、学術論文とはなにか?という問いに対して経済学者のクリス・ブルックスは次のように定義しています。

「学術的あるいは実務的な疑問・問題意識によって導かれ、組織化された、何らかの独創性と新規性を備えた研究論文である。独創性と新規性を備えた研究とは、我々の知識に何か新しいものをもたらす研究という意味である。論文は独創性のある問いを明確に設定し、その問いに対して答えを導き出すという形になっていなければならない。この形をもとに自らの主張を体系的に構成することが論文作成である。」[1]

独創性と新規性・・・横並びが大好物のキミたちが最も不得意とする呪いの言葉ですが、ハッキリいってこれしか求めていないのが学術論文というものです。私が大学院生のときの論文審査では「この研究の独創性はどこにあるのかね?」とか「この論文の新規性はなんだね?」と審査委員の先生から必ずえらそうな態度で問われます。というかこの質問を受けた時点でもはやアウトです。それくらいの勢いで学術論文にとって重要な要素です。

学術研究の目的は、これまでだれも知らなかった新しい知識を世の中に提供することにあります。ですからそれができなかったら論文を書くだけ「ムダな時間だったね」ということになってしまいます。

卒論で大事なことはきちんとした形式を満たすことです

ただ、こういっては元も子もないのですが、卒論ではそこまでのものを求めません。そんなことを求めてたら卒論を読む私が疲れますし、だいたい学部生が書く卒論で世の中が驚く大発見などできるわけがありません。

卒論のテーマはなるべく大きなことを考えないで、幅の広いテーマではなく、狭い範囲で確実に検証できる地に足の着いた小さなテーマを選ぶのがコツです。卒論ではアッと驚く大発見をする必要はありません。むしろ大事なことは学術論文としての正式な作法に基づいてきちんとした形式を満たすこと、そういう論文を書くことを経験し、学ぶことの方が大事です。この作法と形式を身につけておくことは社会に出ても役に立ちます。

学術論文としての作法と形式を大まかにいうと次のような感じです。まず自分の問題意識を明らかにしてください。次に問題意識から導き出した問いを設定してください。そして、その問いが答えるに値するものであることを示すとともに、どのような理論に依拠して検討すべきかという土俵を作ります。その上で自分が考えた答え(仮説)を提示し、その答えが正しいという根拠を客観的な手法によって示し(統計的検証)、最後に結論を迎えるということになります。

論文のスタイルには主に四つの型があります

以上の段取りは論文の構成の仕方でもう一度くわしく触れることにします。ここでは学術論文のスタイルにはどのようなものがあるのかについて述べておきます。学術論文にはだいたい以下四つのスタイルがあります。諸君が書く論文もそうですが、諸君がこれから読む先行研究もだいたいこういう類型に分けられますので知っておいてください。

 仮説検証型 

  • 理論から検証すべき仮説(=理論のインプリケーション)を導き、データによってその仮説が支持されるかどうか(棄却されるかどうか)を統計的にチェックします。通常、特定の経済現象を説明する上で競合する複数の理論=仮説を統計的検証にかけます。
  • 見た目は、長い文章とモデル式と検証結果のデータが表やグラフになって並んでいる論文になります。
    →宮川ゼミの卒論は例年このスタイルがほとんどです。

 理論構築型

  • 数学的モデルを活用して説明したい事象にマッチした理論モデルを構築します。上記の仮説検証型のようにモデルの説明力をチェックするためにデータとの整合性を検証することもあります(=実証分析型と共通した部分)。
  • 見た目は、難しそうな数式を展開する様子が全面に描かれます。ウチのゼミの多くの諸君にとっては邪悪なイメージを醸し出す表情をした論文です。
    →ケース分析を通して、一般化できそうな理論を生成する研究方法ですが、宮川ゼミではあまりやりません。

 事実発見型(ファクトファインディング)

  • 明確な仮説は設定していませんが、事実を明らかにし、その明らかになった事実が意味のあるものであることを示します。解釈は自ら行うものの、発展的解釈を世の中に問うことを目的としています。
    →宮川ゼミの卒論ではこのスタイルを用いることもあります(結果としてこうなっちゃったということもあります)。

 研究レビュー型(レビュー論文)

  • 先行研究を体系的に整理してまとめます。その整理の方法にオリジナリティーを発揮することが必要です。
    →多くはありませんが、宮川ゼミの卒論をこのスタイルでまとめることも可能です。データを使わないかわりに圧倒的に多くの先行研究を読む必要があります。

[1] Brooks, Chris, “Chapter 13 Conducting empirical research or doing a project or dissertation in finance”, in Introductory Econometrics for Finance, 2nd Edition, Cambridge Univ. Press, 2008.

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