本当に株主は株主優待をもらって嬉しいのか【大橋】

こんにちは!9期生の大橋です。
私は現在、株主優待をテーマに卒論を進めています。今回はそれについてお話ししたいと思います。

株主優待とは、企業がその株式を持っている株主に対して、何らかのモノやサービスを提供する制度です。
何らかのモノやサービスとは、企業によって様々です。想像しやすい例を挙げると、食品メーカーが自社製品の詰め合わせを送ったり、ホテルを運営する会社がその宿泊券を送ったりすることでしょうか。このように自社製品やサービスを提供するだけではありません。B to B企業がQUOカードなどの金券を送ることも一般的ですし、社会貢献団体に寄付をするという優待もあります。
株主優待は法律で決まっているような制度ではなく、企業がその実施も内容も自由に決めることができるからです。

そんな株主優待ですが、実は日本独特の風潮であることも特徴の一つです。
起源は諸説ありますが、お中元やお歳暮のように、株主への感謝の気持ちとして贈り物をする風習が根付いていったと言われています。よく株主優待は株主還元の一種であると捉えられますが、厳密にはそうではないと考えます。
なぜなら、株主還元とは、企業がその活動によって得た利益、つまりキャッシュを、投資してくれた株主のもとにキャッシュとして返すことであるからです。代表的なものには配当や自己株取得が挙げられます。形を変えてモノやサービスを提供しても、それは還元(元に戻すこと)ではなく、優待(手厚くもてなすこと)であると言えます。実際、そのお得感からか、個人投資家向けに株主優待本が出版されたり、テレビで特集が組まれたりするなど、世間からの注目度も高い制度です。

しかし、株主優待に対して批判的な意見もあります。
それは、「株主優待は、株主平等の原則に反しているのではないか」という意見です。
株主優待は、一般的に個人投資家向けのサービスであり、機関投資家や海外投資家にとっては、その優待を十分に享受できません。個人投資家の中でも、小口投資家の方が受ける利益が大きいと、その不平等性に疑問を感じる人もいます。
そこで、株主優待のようなサービスではなく、配当や自己株取得といった株主への公平な利益還元を求める声があがっています。

ここで、株主優待の現状を見てみます。前述したとおり海外ではほとんど実施されていない一方で、日本では、上場企業の約4割が株主優待を導入しています。リーマンショックを除けば実施企業数は右肩上がりを続けていました。株主優待の人気の高さをうかがえます。しかし、2019年をピークに実施企業数は減少に転じました。なぜでしょうか?私は、ここに焦点を当てて研究をしていきたいと思っています。

現在、私は減少に転じた要因として、株主平等の原則に反すると株主優待に批判的な声が高まる中、コロナ禍になり、財務的に余裕のなくなった企業が、最初に節約するところとして株主優待の廃止に踏み切ったのではないかと考えています。そのため、「公平な利益還元のあり方という観点から、株主優待を廃止する」と発表した企業は、投資家から好意的に評価されるのではないでしょうか。このことを実証するために、2020年から2022年6月までに株主優待の廃止を発表した企業98社の株価のイベントスタディを行います。
また、98社の株主優待廃止のリリース文を調べたところ、その内容から次の4グループに分類できそうだと気づきました。
①公平な利益還元のあり方という観点から、株主優待を廃止し、配当金の拡充に充てる。
 具体的に、〇円の増配とする見通しである。
②公平な利益還元のあり方という観点から、株主優待を廃止し、配当金の拡充に充てる。
③公平な利益還元から、株主優待を廃止する。
④その他の事情(経営悪化など)により、株主優待を廃止する。
これらのグループごとにイベントスタディの結果を比べてみても面白いのではないかと思っています。
私は、今後公平な利益還元に向けて動いていく、という意志がより感じられる①のグループが、株価の上昇に最もつながると予想しています。

これからは、先行研究の読み込みと並行しつつ、イベントスタディに着手していきます。
実際の株価データから分析してどんな結果が出るのか、ワクワクして楽しみです!

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