株式市場の謎:株式を切り刻むとなぜ価値が上がるの?【大野】

こんにちは!9期生の大野です。今回は僕の卒論のテーマについてお話しします。
僕の卒論のテーマは、株式分割と株価の関係についてです。

株式分割とは、1株を何分割かして、発行済みの株式数を増やすことです。例えば、1:2の株式分割を行うと発行済み株式数は2倍になりますが、理論上株価は1/2になるため特に時価総額には影響を与えません。

企業がこの株式分割を行うと発表すると、本来上昇するはずのない株価がなぜか上昇することがあります。先行研究においても、理由は様々ですが、結果として株式分割には株価を上昇させる効果があるとする論文が多数あります。先ほども述べた通り、株式分割は理論上時価総額に影響を与えないはずです。このことから、株式分割は市場におけるアノマリーの一つと見ることができます。
僕の研究では、株式分割によって株価が上昇するというアノマリーは本当なのか、そしてそれはどういった要因によるものなのかを明らかにすることを目的としています。

僕が株式分割に注目するようになったきっかけは、昨年9月に発表されたトヨタ自動車の株式分割です。30年ぶりの株式分割ということで大きな話題になったトヨタの株式分割では、1:5の比率で分割が行われ、最低投資金額は分割前の約100万円から約20万円まで低下しました。これによりトヨタは個人投資家数が約6割増加しました。さらに、株式分割によるものではないにせよ、分割後に上場来高値を更新したということもあり、それまで株式分割という概念を知らなかった自分が着目し、理論とのギャップに疑問を感じるには十分なきっかけでした。

研究を始めて株式分割について調べていく中で、過去に株式分割バブルというものがあったことを知りました。株式分割を行う上での制度上の問題を利用し、極端な比率での分割を繰り返すことで株価を吊り上げる手法が横行し、のちにライブドア・ショックを引き起こしています。先行研究では、この株式分割バブルやライブドア・ショックを取り上げているものが多く、知らず知らずのうちに選んでいたテーマが実は過去に大きなトピックとなっていたことに驚きました。一方、自分の研究テーマとしては、まだそれほど先行研究が多くない、ライブドア・ショック以降の株式分割でも株価は上昇しているのかという点を明らかにしていきたいと思います。

現状、僕は株式分割は株価を上昇させる効果があり、そのカギは個人投資家にあると考えています。先ほどのトヨタの例であったように、最低投資金額が引き下げられることで個人投資家がが流入しやすくなり、それが株価の上昇につながるのではないかという予想です。まだまだ、先行研究の読み込み、実際の株価データを用いた分析のどちらも途中ですが、株式分割という奥深いテーマの研究を楽しんで行い、アノマリーの謎を解き明かしていきたいと思います。

株式市場の謎:株式を切り刻むとなぜ価値が上がるの?【大野】 への3件のコメント

  1. 杉山聡一

    アノマリーって定義的にはなんやろね?
    分割が株価を上げるのか、はたまた株価が順調に上がってるから分割して、同様に上がってるのか。
    個人投資家は、なぜ分割前には買わずに分割後には買うのか。分割前は市場が適正な株価になっていないのか。
    ランチョンとかでみんなで話せばどんどん膨らみそうやね。

    返信

    1. 大野真也

      杉さん、コメントありがとうございます!
      アノマリーは、ファイナンスの理論では説明できないが、現実の市場で経験則的に起こると分かる法則だと考えています。
      過去の研究を見ても様々な観点からの仮説が示されているので、議論する余地が大きく残されているテーマだなと自分自身考えているので今後が楽しみです!

      返信

  2. 杉山聡一

    大野くん、君は偉いね。
    どれだけのゼミ生が、誰がブログを書いてて、どんな意見を先輩から貰ってるかを把握してるのやら…。

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