ファミリービジネスと非ファミリービジネスの設備投資行動に関する研究

論文要旨

 本論文は、ファミリービジネスと非ファミリービジネスの設備投資行動の違いについて、検証を行ったものである。これまでさまざまな先行研究の中で、ファミリービジネスと非ファミリービジネスのさまざまな行動について議論されている。本論文では、ファミリービジネスに関する主要な 4 つの理論について先行研究とともに紹介したうえで、設備投資行動について注目し、ファミリービジネスと非ファミリービジネスの違いを検証する。
 設備投資行動とは、現在のキャッシュフローを犠牲にして将来のキャッシュフローを生むと期待される財を購入することである。そのため筆者は、企業の中長期的な経営が特徴の一つとされるファミリービジネスの設備投資行動は、非ファミリービジネスのものと異なるのではないかと考えた。
 本論文では、前年の投資額からの変化率を投資比率とし、ファミリービジネスと非ファミリービジネスのあいだの投資行動を、投資比率の平均を各年で比較した。対象期間は、2009年から 2019 年である。また、PBR が 1 未満の企業は、市場からの評価が低いため、本来なら新たな設備投資が歓迎されず、その結果設備投資を行うことが困難になると考えたため、PBR の大きさによって、投資比率の平均に差があるのかについても検証する。また、それぞれの平均の差が有意なものであるか検証するために平均の差の検定をおこなった。
 その結果、本論文では、投資比率の平均値の検証の結果より、ファミリービジネスの方が非ファミリービジネスよりおおむね積極的に投資を行うということが分かった。さらに、平均の差の検定では、全てではないもののいくつかでファミリービジネスと非ファミリービジネスの投資比率の平均の差に有意差が認められ、そのすべてでファミリービジネスの方が投資比率の平均は大きかった。
 一方で、平均の差の検定から、PBR の大きさが投資行動に与える影響は小さいことがわかる。つまり、日本市場において、PBR が1を下回るというような評価を受けていても、企業が投資する上では関係がないといえる。
 ファミリービジネスの設備投資に着目した研究は少なく、本論文の研究は日本のファミリービジネスと非ファミリービジネスの設備投資行動の違いについて新たな視点を与えることになる。また、PBR が1未満の企業が多数上場する日本市場において、市場評価の低い PBR1 未満の企業が、PBR が 1 以上の企業に比べてどのような投資行動を行うのか解明する。

あとがき

 卒業を間近に迎え、卒業論文を書き終えたいまの心境は、大阪市立大学に入学してよかった、宮川研究室で先生のもとで学べて幸運だったということです。むしろ、宮川研究室で先生やゼミ生と一緒に勉強するために、受験で悔しい思いをし、大阪市立大学を選んだのかもしれません。
 ゼミに入るまでは、私は何のためにこの大学に来たのだろうと感じることが多々ありました。大学に入って熱中できるものもなかなか見つけられなかったし、高校時代の友人たちに遅れをとっているなというコンプレックスも正直に言うとありました。そんな中で、一回生のときに受講した証券市場論は、難しいテーマながらも先生が分かりやすく情熱的に教えてくださっていて、毎週わくわくして受講していましたし、授業で宮川研究室の存在を知ったときから、私もそこで勉強するんだと意気込んでいたことが懐かしいです。
 宮川研究室に入門してから、早いもので 2 年以上が過ぎようとしています。ゼミを決める前にはじめて研究室に訪れたときの、宮川先生の「よく来たねえ!」という歓迎のお言葉と、先輩方も一緒にさまざまなお話をしたことが、つい昨日のことのように感じます。あの日から私はずっと宮川先生のもとで学んできました。毎週水曜日のゼミはもちろん、企業分析や CORE 論文、ディベート大会、三商大合同ゼミなど、先生はいつも全力で私たちに指導してくださいました。普通の学生なら体験できないようなさまざまなイベントもアレンジしてくださり、社会人の方との貴重な交流もたくさんありました。さらに、この卒論を執筆するにあたり、私の計画性のなさや勉強不足のために、先生には最後の最後までご迷惑をおかけしましたが、研究室に行くといつも歓迎してくださり、「困ったなあ」と言いながらも見捨てずに指導してくださりました。先生ほどパワフルで情熱的で厳しくも優しい人は、この先きっと出会えないと思います。先生からはコーポレートファイナンスだけでなく、モノの考え方・伝え方、そして社会人としての振る舞い方など多くのものを学びました。先生から学んだ多くのものは財産であり、私が今後生きていく上で大きな自信に繋がると思います。本当にありがとうございました。
 また、ゼミで出会った仲間も、かけがえのない存在です。7 期生とはたくさんのときをともにしました。特に、企業分析、CORE をともに頑張った、変更しちゃって委員会のまーちゃん・はるぽん・ほのほの・たいが・やぶ。今振り返っても、良いチームだったなと思うし、このチームで研究ができて本当に良かったと感じます。みんな勉強熱心で、積極的に研究に取り組む姿勢をみて、何度も刺激をもらい、最後まで妥協せず研究を行うことができました。ときには、議論が過熱するあまり暗い雰囲気になることもありました。でも、それぞれの意見を真剣にぶつけ合う時間が何度もあったからこそ、全員が納得できる研究ができたのだと思いますし、最優秀論文賞という結果もいただけたのだと思います。自己主張が強くて、自分の意見が通らなければあからさまにへこんでしまうような私と、一緒に研究してくれてありがとう。また、別のチームで頑張っていた恵海、直人、ふじ、ちゃっか、ビクトリア。この 5 人の頑張りにも常に刺激をもらっていました。私たちのチームで考えもしなかったアイデアや分析を行っているのを見て、負けていられないなと感じたし、お互い切磋琢磨し合える関係だったと感じます。ありがとう。
 次に、先輩後輩に対して感謝を述べたいと思います。先輩方にはゼミに入った当初からとても親切にしていただきました。私がすぐにゼミに溶け込めたのは、先輩方が全力で歓迎してくださったからです。企業分析や CORE に取り組んでいる際も、的確なアドバイスをたくさんいただきました。特に、6 期生はらはるさんは、2 年以上一緒に過ごすなかで、私たち後輩のためにたくさんの時間を割いてくださいました。議論が難航していたら、そっと軌道修正してくださり、感謝しています。的確過ぎる指摘が悔しくて、何度か反抗的な態度をとってしまったこともありました。ごめんなさい。
 また、先輩方にたくさん支えられたにも関わらず、後輩に対してあまり力になってあげられなかったことは後悔のひとつです。むしろ、8 期生の研究や輪講を通して学んだことの方が多く、私の方が支えられていました。ありがとう。このあと 8 期生が取り組むことになる卒論に対して、3 つアドバイスをするならば、①なんでも先生に相談する ②先行研究をしっかり読む ②計画的に行う ということです。どれも当たり前のことですが、それこそが大切なことだと私は卒論の執筆を通して実感しました。そして、残り 1 年の学生生活、思いっきりファイナンスを勉強してほしいと思います。
 最後に、私をこれまで育ててきてくれた両親に感謝します。私が今、自分に自信をもって毎日楽しく過ごすことができているのは、愛情たっぷり育ててくれた両親がいたからです。ふたりのおかげで、私はこれまで何不自由なく勉強に励むことができました。春から社会人になりますが、次は私が少しでも両親を支えられるように頑張ろうと思います。
 これまで私を支えてきてくださった皆さん、本当にありがとうございました。 

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