こんにちは、9期生の藤岡です。
現在、卒業論文に取り組んでいるのですが、僕がテーマに取り上げたのは配当についてです。
MM理論では、配当は完全市場の場合、企業価値には影響しないものであるとされています。さらには税金がある不完全な市場の現実世界では、株主価値を毀損するものだと言われています。
でも日本の企業で無配政策をとる企業はごくわずかです。ではなぜ配当を支払うのか。
配当を支払う経営者の行動を説明する仮説のひとつとして、配当シグナリング仮説があります。簡単に述べると、配当には経営者の思いが込められていて、配当が経営者から株主への将来の利益に関するメッセージになっているという考え方です。
実際、投資をする際、景気によってコロコロと配当政策を変える企業と景気に左右されず配当をしっかり支払続けている企業とでは後者の企業の方が信頼性や経営基盤の安定感が高く、将来的に好業績を生み出すように感じると思います。
そのため、増配を続ける企業は高く評価されて人気株になり、減配や無配を続ける企業は投資を避けられる傾向が強いと思います。
そんな配当シグナリング仮説ですが、僕が配当に関する先行研究を読んでいると、実はかなり否定されていることがわかりました。
例えば、Benartzi et al.(1997)は増配または減配した企業と配当不変企業とを比較して、異常な収益が発生しているのかどうかを実際に検証しています。その結果は、増配(減配)した企業は増配期に大きな増益(減益)を経験するが、その翌期・翌々期の利益変化を見ると、配当変化とまったく関係がないと証拠付けています。つまり、配当変化と将来利益とは関係がないと言っているのです。
でも、こんな考え方はどうでしょうか。
コロナ禍でも増配した企業は将来的な増益を示しているのではないのか。
コロナショックは株価を暴落させ、数多くの企業経営を揺るがし、企業は配当を据え置く、もしくは減配をせざるを得ない状況になりました。増配しろと普段は口うるさい物言う株主ですら減配を許容する姿勢を示し、減配予想でも買われる銘柄が多い市場状況でした。
実際、減配を決定した企業の多くが、先行き不透明を理由に配当決定を見送る、もしくは据え置き、最終的に減配を決定しており、減配が許容される市場動向に合わせて減配を決定したのではないかと予想されます。
そんな不確実性下でも増配を決定する企業は、将来的な利益を楽観的に捉えるような企業ではない、将来的にも増益を見込めると思えませんか?
そこで僕は「コロナ禍における増配は将来増益のシグナルになっているのではないか?」というテーマで卒論に取り組んでいます。
現在の進捗としては、まず、コロナ禍に増益した企業と据え置きした企業との異常収益に関して、平均の差の検定を実施するとともに、本当にその増益が増配に関係しているのか検証するため回帰分析に取り組んでいます。また、まだまだ僕の仮説には説得力が足りないと実感しているので、仮説を裏付ける理論や研究がないか、先行研究を読んでいる状況になります。
鳥海直人
7期生の鳥海です。
こちらも面白そうだなと、そして想像力が求められるテーマだなと感じますね‥。コメント落としておきます。笑
まず、コロナ禍で増益をする企業はいったいどのような企業なのか、データや定性的な情報から輪郭をつくっていくことも大事かと思いました。
データ採取期間が21年度も絡んでくる場合、製造業で資源高の影響が大きくなってくるので、増益企業のサンプリングに影響出てくるかもしれません。
私が普段見ている産業で、コロナ禍で増益している分野は
・電子部品(在宅勤務によるPC需要 特に半導体)
・運輸、配送業
・倉庫業
・医療用部材(手袋)が多いような印象です。
さいごに、なぜ企業はわざわざ配当でシグナルをする必要があるのかについて、藤岡さんの答えを持っておくといいと思います。
細かい小手先の話がメインになりましたが、これは自分のアイデアだけではなく先生はじめゼミ全体で作ると特に良くなっていくテーマなんだろうなーと思ったので、お菓子やビールで買収して巻き込んでいってみては如何でしょうか
藤岡洸喜 投稿者
鳥海さん、コメントありがとうございます!
たしかに、コロナ禍で全ての企業が苦しい状況ではなく、その状況を逆手に利益を上げる企業がいるということも大事な観点になってくると思うので、なぜこの業界は急激に利益が変化したのかという点についてもしっかり思考していきたいと思います。
杉山聡一
将来増益のシグナルってどうやって測るんやろ?
経営者は、どれくらい先の増益を見込んで、増配決定するんやろね。