やはり 「てこ」 のお好み焼きがナンバーワン
「宮川ゼミくいだおれガイド」もようやく外に飛び出すことにしよう。まずは宮川ゼミの開講以来ずっとお世話になっているお好み焼きの名店「てこ」である。杉本町駅から徒歩 3 分のメインストリートに面した好立地に派手な看板で店を構えている。
私は大阪人ではないだけに、かえって観光客のノリで大阪でランキングされるお好み焼きの有名店はほぼ制覇したつもりである。しかし、ここ杉本町てこのお好み焼きはおそらく全国のトップクラスに入るだろう。東京から客人が来たときにはたいていてこに連れて行く。宮川ゼミでは、ゼミの後やちょっとしたイベント後の打ち上げなど実に気軽に利用する言わばたまり場的存在となっている。奥の小上がりが指定席だが、人数が多いときには大将のご配慮によって二階の座敷を占拠させていただく。
オーダーは生ビールとキムチを頼むとまず焼き物から攻める。何と言ってもホルモン焼きだ。ねっとりと甘辛い濃厚なオリジナルソースがからんだ適度な弾力のホルモンは一人前で生ビール三杯はイケる。その後にあっさりと口直しのもやし炒めは、あたかも外角低めのストレートの次に内角をえぐりに来るスライダーのような効果的配球となる。あわてて手を出してはいけない。あつあつの鉄板の上にもやし炒めが提供された後でポン酢がかけられるからだ。しゅわ~っと湯気が上がり、このほんのりした甘さと酸味に引き締まったもやしが濃い味のホルモン後で絶妙のフォーメーションを形成する。すかさずこの後にとんぺい焼きを持って来たい。あざやかな黄色の卵に包まれたとんぺい焼きが食感と同時に鉄板をぱっと華やかにする
(写真1)配色も食欲そそるカラフルな「とんぺい焼」
(写真2)私の大好物、ぜいたく「豚玉卵のせ」のこの勇姿を見よ
いよいよ本命お好み焼きの出番となる。ミックス玉といきたいが、初心者の方々にはシンプルな豚玉をむしろオススメしたい。常連の私としては豚玉「卵のせ」といく。なんたって卵である。そもそもお好み焼きの生地には卵が練り込まれているはずなのに、やっぱり卵である。写真のように卵が載っているとそれだけでうれしい。なんだか得した気分になる。
モダン焼きというテもあるが、私としては以上をオーダーした最後のシメとしてミックス焼きそば、もしくはそばめしを持って来たい。焼きそばはやや太めでしっかりしたコシのストレート麺を使用している。この麺
の存在感が私の好みにぴったりである。ソースは程よく甘めだが、べとべとしつこくない。適度に麺と具にからみ、サイコーの仕上げとなる。「キムチ→ホルモン焼き→もやし炒め→とんぺい焼き→豚玉(卵のせ)→ミックス焼きそば」以上を「てこ黄金のフルコース」と私が勝手に呼んでいる。「魔のフルコース」と呼ぶ不届きな学生もいる。
てこでは、昔ケンカが強かった風の大将が厨房の鉄板によって調理したものを、ホール係のお姉さんがチリトリのような容器で運んで客の目の前にある鉄板に提供してくれる。ここが大将のプロとしか言えないワザなのだが、外側にきっちりとほど良い焦げ目がつき、中が今まさに固まろうとしている瞬間、まるで秒単位で計算されつくしたタイミングでお好み焼きが鉄板に乗る。これ以上早くてもいけないし、これ以上遅れてもいけない。鉄のへらでさくっと切り分け、口に入れると中はほくほく、しかも野菜の食感がきちんと残っている。ソースも青海苔もすでにかけられているが、中身は出汁と野菜のほんのりした甘さが嫌味なく主張し、口の中で深い味わいとなる。
最後に、大将に自信のオススメはなに?と聞いたところ「オススメねぇ、そんなんあんまり考えんかったけどなあ。ま、しいて言えば豚玉食うてほしいかな。」豚玉というシンプルなメニューで勝負するあたりに大将のプロ根性を感じた。
(写真3)後列右が大将。JD にも人気。
(写真 4)伝統あるてこののれん
(写真5)中央がいつもお好み焼きを運んでくれるおねえさん
(写真 6)2階の個室。宮川ゼミがいつも貸し切ります。
本稿は大阪市立大学商学部宮川研究室ウェブサイトで展開している「宮川ゼミくいだおれガイド」に掲載されたものです。本稿に
おける観察及び意見は宮川壽夫の主観による個人的見解であって大阪市立大学の考えを代表するものではありません。
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