CSR活動が企業の資産効率に与える影響に関する実証研究

論文要旨

本論文の目的は、企業の社会的責任活動(以下 CSR 活動)が資産効率及び企業価値に与える影響について実証的に分析することである。その結果、CSR 活動に対する評価が高い企業ほど資産効率及び企業価値は低いことを実証した。

CSR とは、Corporate Social Responsibility の略称であり、近年急速に規格化・制度化が進められ、世界中で注目を集めている概念である。しかし、その定義は地域や時代によって異なるため端的に提示することは難しいとされている。近年の日本企業では、CSR について自己利益の追求に加え、公的利益を考慮した活動を行うべきものという意味合いは認識されているものの、詳しい定義づけがされていない現状がある。そのため、廃棄物削減や従業員の労働環境の整備、地域社会への貢献、企業統治など、その内容は多岐に渡る。

近年では研究領域としても注目を集めており、その効果に関する研究論文が多く発表されている。特に CSR が企業業績にどのような影響を与えるかについての研究は盛んに行われているが、結果に関しては正負それぞれの主張が展開されており、その是非はいまだ一つの結論に達していない。

本論文では、CSR 消極論の立場に立って主張を行う。その根拠について、日本の CSR 概念は米国から輸入されたものであるため社会貢献の意味合いが強いという点と、CSR が社会で広く注目されているため、CSR を積極的に行うことが企業の評判を高めることにつながるという点の二つの点に着目して説明する。

日本の CSR 活動は、概念を広くとらえているため、本業の利益に結び付かない社会貢献的な活動も、CSR として認められる。このような CSR 活動は CSR 格付機関からもポジティブに評価される。また、近年の CSR 活動が社会的に注目を集めているという現状より、このような格付機関の評価を高めようとする経営者のインセンティブが働き、私的便益につながる可能性が高い。すなわち、CSR の投資が利益につながりにくいにも関わらず、経営者は積極的に投資を行ってしまう。つまり、CSR 活動を積極的に行えば行うほど、過剰投資につながるため、資産効率が低下すると考えられる。

以上より、本研究における仮説は、「日本企業において、CSR 評価が高い企業は資産効率が低い」とする。また、この仮説が正しいとするならば、投資家は企業価値を高く評価するとは考えにくい。むしろ、ディスカウントして評価すると考えられる。よって、「日本企業において、CSR 評価が高い企業は企業価値が低い」という仮説も追加的に検証を行った。

対象企業は、2018 年版「東洋経済 CSR 企業総覧 ESG 編」で評価対象となり、なおかつ全データが取得可能な企業である。CSR 評価データ以外の本研究に用いた株価・会計データは、日経 NEEDS Financial Quest より 2017 年の 1 年間のデータを取得した。

検証は、日本証券アナリスト協会(2010)を参考にモデル式の作成を行い、被説明変数に資産効率の代理変数として ROA、説明変数に ESG 評価、コントロール変数として対数時価総額と有利子負債比率を用いて重回帰分析を行った。追加検証については、被説明変数に企業価値の代理変数としてトービンの Q を用い、説明変数に ESG 評価、コントロール変数として ROA と対数時価総額と有利子負債比率を用いて重回帰分析を行った。その結果、どちらも仮説と整合的な結果が得られた。

あとがき

本論文を書き上げた今、一心にゼミ活動に取り組んだ二年半を振り返り、心の底から宮川ゼミを選んでよかったと実感しています。本当に濃い二年半でした。人生でこれほどまで何かに没頭したことは初めてです。この、何にも代えがたい学生生活を支えてくださった宮川ゼミの先輩、後輩、同期のみんな、そして宮川先生への感謝の気持ちを述べ、本論文のあとがきとします。

まずなにより、二年半変わらず熱いご指導をしてくださった宮川先生、本当にありがとうございました。コーポレート・ファイナンスの「コ」の字も知らなかった私がゼミに入った理由は、ただ純粋に先生のもとで学びたいと思ったからです。初めて研究室を訪れた日、ゼミ選びに思い悩み、自分は何に向いているのかわからないと弱気な発言をしていた私に、先生は「向いている、向いていないを何かを始めるときの判断基準にしてはいけない」というお話をしてくださいました。「何十年も働いてきた私でもまだどの仕事に向いているのかなんてわからないよ」と笑ってくださったのがとても印象的で、それまでの悩みがなくなり、一瞬でこのゼミに入りたいと思いました。何かを始めるときに不安が先立ってしまう自分を変えられるような気がしました。変われたかどうかはまだわからないのですが、それ以来、何かに挑戦するとき必ずそのときのことを思い出しています。このことも含め、二年半の間、先生に話していただいたことのひとつひとつが私の成長や変わるきっかけになっていました。就職活動では長くかかり大変ご心配をおかけしてしまいましたが、今では何度も相談に行けたことを嬉しく思っています。また、4 回生夏のシアトル旅行は、素敵な方々との出会いを含めた全部が一生忘れられない大切な思い出となりました。先生には、勉強面はもちろんのこと、それ以外の面でも大切なことをたくさん教えていただきました。大学生活で、こんなに熱心に、いつでも全力で、そしてなにより私たちを一番に考え楽しませる指導をしてくださる先生に出会えるとは思っていませんでした。本当にありがとうございました。

そして、私が尊敬してやまない同期のみんな、本当にありがとう。二年半の間、一番近くでともに成長できたことを嬉しく思います。3回生で行った企業分析と CORE 論文では、最終目標は何か、今何をしなければならないかを常に考えながら、頭をひねってチームで話し合い、ひとつの結論を出すことの楽しさを知りました。また、全員の意見を尊重し、耳を傾けてくれるチームだったからこそ、話しながら自分の考えがまとまっていく感覚を何度も味わうことができました。本当に良いチームだったと思っています。このチームでの活動は私にとって貴重な経験でした。そして、この卒業論文の執筆を終えた今では、6 期生は、何度も先頭集団が入れ替わりながら、お互いを高め合える素晴らしい期だったと感じています。それまでのチーム活動と違い、卒業論文は一人でテーマに取り組むため、自分自身とどれだけ向き合えるかが試されました。1 年にわたる長い研究で常にモチベーションを高く維持することは大変難しいことです。しかし、失速するたびにみんなの頑張りに励まされ、負けてられないなと思い、最後まで走りぬくことができました。6期生のみんなは、良きライバルであり、自慢の友達です。これからそれぞれの道を歩むことになりますが、これからもこんな風に頑張っている姿を見て、お互いを高め合える関係を続けていきたいと思っています。

次に、去年宮川ゼミを卒業されましたが、ゼミに入った当初から大変お世話になった 5期生の先輩方と、普段のゼミをより活気あるものにし、刺激を与えてくれる後輩たちに感謝を述べたいと思います。先輩方が卒業され、私たちが 4 回生になってからのこの一年は、先輩方の存在の大きさを改めて実感する一年でした。振り返ってみると、私たち 6 期生がのびのびと研究に没頭できたのは、先輩方が誰よりも喜んで私たちを迎え入れ、支えてくださったからだと思います。先輩方の議論のスピード感や、斜めから切り込む鋭い意見を思い出し、懐かしく思うと同時に、もう一度同じ机で議論を交わしたいという思いが強くあります。また、後輩には、いつも新しい視点から意見をもらい、とてもいい刺激を受けています。頭の回転の速さには驚くことが多く、それをバネにして努力することができました。本当に頼りになる、可愛い後輩です。ただ、唯一いっしょにする活動であるディベート大会に、就活のため全力で参加できなかったのだけが悔しく思っています。あまり頼りにならない先輩だったと思いますが、仲良くしてくれてありがとう。

感謝と同時に、7 期生・8 期生、そしてさらに次の後輩に向けては、卒論を通じて実感したことやアドバイスを残しておきたいと思います。書き終えてまず思うことは、計画性を大切にしてほしいということです。1 年間という長い期間で仕上げるため、まだまだ時間があると思ってしまいがちです。しかし、自分が納得する最高のものを仕上げたいならば、時間はいくらあっても足りないと思っておくべきです。私はかなり前から順調に進めてきたつもりでしたが、やはり最後の方は締め切りが迫っているという焦燥感を感じずにはいられませんでした。なので、何月にはどこまで終えておくかを常に考えながら、毎日を大切に過ごしてほしいと思います。そして、卒論の内容について、先生、同期、先輩、後輩にできるだけたくさん話してください。卒論は一人でするものと思って思い悩まないでください。悩んでいたことも、誰かに話せば意外なところからヒントが得られて案外簡単に解決したり、話すだけで考えがまとまって道筋が見えてきたりします。私はそんなことが何度もありました。だから、後輩のみんなにも、この宮川ゼミという環境を最後の最後までフル活用して、自分の研究にどっぷり浸ってほしいと思います。みなさんが納得のいく最高の卒業論文を書き上げられることを願っています。

最後になりましたが、言いたいことを言い、したいことをして、いつもわがままばかりの私を見守ってくれた家族には心から感謝しています。帰ってくるのが遅くても、いつも起きて待っていてくれてありがとうございました。そしてなにより、こんなに充実した自由な学生生活を送らせていただき、本当にありがとうございました。まだまだ未熟物の私ですが、これから少しずつ恩を返せるように頑張っていきたいと思います。これからも変わらずどうぞよろしくお願いします。

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