CSR活動と収益性・企業価値の関係に関する実証研究

論文要旨

本研究は、日本企業のCSR活動と収益性・企業価値の関係に関する実証をテーマとした研究である。現状、多くの日本企業においてCSR活動が盛んに行われているにもかかわらず、先行研究におけるCSR活動と企業パフォーマンスの関係の実証結果は、正の関係、負の関係、中立の関係というように混在している。そこで、最新データを用いてどのような関係があるかを検証した。そして、CSR活動と資本効率や企業価値とは負の関係の傾向があるという結果が得られた。

今回の研究を行うに至った問題意識は、現在CSR活動が盛んに行われているにもかかわらず、企業パフォーマンスとの間に一貫した正の関係が得られていないことである。2000年代に入って、多くの日本企業がCSRに取り組むようになった。国際機関による統一基準等の整備に伴い、日本政府も働きかけを行った結果、日本企業において急速なCSRの制度化が進んだ。また、投資家側の動きとしても、国連による責任投資原則(Principles for responsible investment PRI)に年金積立金管理運用独立行政法人(以下、GPIF)が署名してからというもの、日本国内でもESG項目を重視する投資に注目が集まっている。

そもそも企業の目的は企業価値を拡大させることである。つまり、企業のいかなる投資も、企業の目的である企業価値拡大に結び付く必要がある。現在多くの日本企業では、CSR活動に資本を投入し、企業ごとにさまざまな取り組みを行っているが、これも最終的に企業価値拡大につながっている必要がある。

CSR活動が企業価値に及ぼす影響については、見解が分かれており、その理由としてステークホルダーとの良好な関係を維持することによる長期的な利益獲得が期待される一方、経営者が自己の名声を高めるため、CSRにかけるコストが過大になり、企業価値が低下する可能性が指摘されている。

こうしたCSR活動による企業の社会的パフォーマンス(CSP)と、企業価値やフィナンシャル・パフォーマンス(CFP)の関係についての実証研究は、1970年代以降、米国を中心に数多く進められてきた。しかし、その結果は混在していることが報告されている。例えばPeloza(2009)1は、先行研究の59%CSRCFPの正の関係を支持し、

27%が負の関係、残りの14%が正負入り交じった中立的な関係であるという調査結果を報告している。

日本での先行研究においても、米国と比較するとまだ研究の積み重ねは薄いが、結果は同様に一貫していない。このように、CSR活動が企業パフォーマンスに与える影響に関しては、これまでの研究では一貫した実証結果は得られていない。よって、近年のサンプルを用いた検証ではどのような結果が得られるかということに焦点を当て、本研究を行った。

また、本研究の特徴として、分析に用いた期間があげられる。Davis(1960)によれば、CSRの概念は企業経営の文脈で考えるべきであり、「その取り組みは長期にわたって企業に経済的利益をもたらす」ものである。長期的な企業価値拡大が前提となっているにもかかわらず、先行研究では、5年間程度という比較的短期間での検証が多い。この背景には、日本企業のCSR活動が盛んになった時期が2000年代以降と、欧米に比べて遅いことによるデータ上の制約などがあると考えられる。そのため、本研究では対象期間を10年間と設定し、検証を行うこととした。

あとがき

わたしにとって卒業論文執筆は自分と向き合う時間でした。先行研究や本を読み、膨大なデータを手打ちし、統計について学び、論文としてまとめたプロセスは、一朝一夕で完結するものではなく、ついに最後までたどり着けたことに安堵しているとともに、今後の自信になると嬉しく思っています。わたしは、さまざまな捉え方のあるCSRというものへの理解と、それを文章にする執筆作業に苦労しました。取り組むうちに、自分の嫌なところ、不得意とするところが如実に現れ、どんな些細な妥協も書き上げた文面にしこりを残します。妥協せずに自分で一からひとつのものを作り上げることが、どれだけ大変かを知ることができました。

2年間のゼミ生活のことを考えると、真っ先に毎週水曜日の711教室を思い出します。春は理論と現実の違いに翻弄されながら、基本書の解釈について意見しあい、夏から秋にかけてはチームで作成したプレゼンについて、全員で話す時間が好きでした。互いの意見に耳を傾け、それを踏まえて次の意見が飛び出します。発言が重なると、驚きやさらなる疑問が生まれ、未知の世界に向かうような興奮を覚えました。また、話が脱線していったときは、宮川先生がスマートな助言により引き戻してくれます。おかげで私たちは安心して思ったことを躊躇なく言葉にできました。

人の話を聞くというのは、ただテンポ良く頷くことではなく、自分の中に取り込み、咀嚼することです。加えて宮川先生には、「自分の言葉で話す」、「サービス精神を持って伝える」と教わりました。教わったことを、頭では分かっていても身につけきれなかった部分も大いにあります。しかし、誰かに出来事や自分の思いを伝える、そのたびに思い出し自分のものにしていきます。

宮川先生は、成熟した大学生として、そして社会人としてどう振る舞うべきかを、多くの時間を費やして教えてくださいました。わたしが自分で認識できていなかった長所も欠点も、すべて的確に指摘してくださる先生の言葉は、ひとつひとつが深く、愛のあるものでした。また、インドネシア、シアトルと2年連続で先生と海外訪問させていただき、現地で多くの素敵な方とのつながりを作っていただいたことは、かけがえのない経験です。この大学生という若い時期に、学問のおもしろさに触れ、今後の生き方の指針を宮川先生にご教授いただけた自分は本当に幸せだと思います。宮川先生、本当にありがとうございました。 31

また、同期である6期生の存在はとても大きなものでした。ひとりひとりが妥協を許さず努力する姿がいつも隣にあり、刺激を与えてくれました。CORE論文にチームで取り組んでいる時、卒論執筆時など、行き詰まり諦めて逃げたくなったとき、同期の叱咤激励を受けて姿勢を正したことは数知れません。

そして最後に、いつも私を支えてくれる家族に感謝を述べます。大学生活を満喫し、最後には一人暮らしまでさせてもらいました。家に帰って晩御飯が用意されているありがたみを痛感しています。本当にありがとうございました

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