ファミリー企業と現金保有に関する実証分析

論文要旨

 本研究はファミリー企業の現金保有比率が、非ファミリー企業と比較して高いことを実証的に明らかにしたものである。ファミリー企業について、先行研究においては一貫した定義は存在していないが、一般的に創業者一族が経営陣として経営に直接携わっている企業や、一定の割合以上の株式を保有している企業を指す。
 本稿ではまず、そのようなファミリー企業が近年の日本の上場企業において、どれぐらいの割合を占めているのかを産業ごとに分類して明らかにする。
 さらに、Barney(1991)が唱えた資源ベース理論、Gomez-Mejia(2007)が唱えた社会情緒資産論に基づき、ファミリー企業が非ファミリー企業と比較してどのように異なる経営資源を保有し、どのようなことを目的として経営を行っているのかを明らかにした。その後、エージェンシー理論に基づき、所有と経営が一致している場合と一致していない場合に生じうるエージェンシー問題について述べる。
 さらに、Jensen(1986)が唱えたフリーキャッシュフロー仮説に基づくと、現金を手元に潤沢に保有している企業は、経営者が私的便益を追求する可能性がある。経営者が私的便益を追求することは、企業価値の毀損に繋がるため、自社株買いや配当を行うことで、現金を還元することでエージェンシー問題が緩和されることが示されている。
 しかし、ファミリー企業は所有と経営が部分的に一致しているため、経営者と株主がそれぞれ追求する利害の対立がないために、生じうるエージェンシー問題は非ファミリー企業と比較して深刻ではないと考えられる。そのため、フリーキャッシュフロー理論が述べているように、現金を還元する必要性が低いため、ファミリー企業の経営者は企業内に現金を貯蓄するのではないかと考えた。さらに、社会情緒資産論に拠れば、ファミリー企業の創業者一族は、自ら企業を所有し続けることに関心があるため、外部からの資金調達に頼らず、内部の資金である現金を投資に使用するために貯蓄すると考えられる。そのため、本研究における仮説は、
「ファミリー企業の現金保有比率は、非ファミリー企業と比較して高い」と設定した。 

 2008 年から2018 年の10 年間における、金融業を除く上場全社を分析対象として重回帰分析を行った結果、ファミリー企業の現金保有比率は非ファミリー企業の現金保有比率と比較して高いことが示され、仮説と整合的な結果を得ることができた。

あとがき

 本研究はファミリー企業の現金保有比率をテーマとした実証研究である。私が企業の現金保有行動に興味を持ったきっかけは、チーム(財務戦隊レバレンジャー)でダイドーグループ HD を分析対象として企業分析を行った際、同社の現金保有比率が競合他社と比較して高く、そのことが株主からどのように評価されるのか考えたことである。そこから、現金保有に関する先行研究を読み進める上で、企業の現金保有行動の要因に関する先行研究を発見し、深く考えずファミリー企業であるか否かは現金保有比率と相関があるのではないかと思い卒業論文のテーマとした。しかし、このように思いつきで卒業論文のテーマを決めたことが卒業論文を執筆することを難しくさせた。FQ で膨大なデータを取得することや、データセットを作成することはもちろん簡単な作業ではなかったが、統計の結果が出てから、仮説を構築するまでの論理を組み立てることが最も難しいと感じた。これから卒業論文を執筆する後輩は、仮説を構築することを念頭にテーマ決めは慎重に行って欲しいと思う。
 仮説を構築するまでの論理を組み立てることの難しさを痛感したが、宮川教授には多くのアドバイスをいただいたからこそ論文を執筆できたと思っている。さらに、はじめは先行研究から得た知識を何の脈絡もなく述べていたが、読み手が流れるように論文を読めなければならないと教わり、章と章のつながりを意識して執筆することができた。
 さらに、6 期生の原田さんには同じファミリー企業の研究を行っていたことから、データセットの作成に力を貸して頂いたり、拙い文章を何度も添削していただき、私が理解するまで何度も説明していただいた。原田さんなしではこの論文は完成していなかったと思う。
 そして、卒業論文こそ個人で執筆するものであったが、同期の 7 期生には宮川ゼミに入門してから約 2 年間、クリスマス会のダンスの練習に始まり、クリティカルシンキング、ディベート大会、企業分析、CORE 論文の執筆など、多くのプロジェクトを共にしてきた。特に思い出として記憶に残っているのは、CORE 論文の執筆だ。テーマがなかなか決まらなかったり、3 ファクターモデルに基づき企業価値を算出することに時間がかかるなど、何度も壁にぶち当たった。しかし、執筆の段階では、論文の構成や言葉の使い方など一言一句にこだわり、チームで納得のいく論文を完成させることができた。その過程で激しく議論し合うこともあったが、一人一人がより良い論文を執筆しようという思いがあり、その思いが結果として優秀賞を獲得することに繋がったのではないかと思う。このチームで一緒だった人以外の 7 期生にも感謝でいっぱいである。学情 6 階に行けば誰かはいて、他愛のない会話や普通の友達ではできないような相談事まで何でも話すことができた。私が自分らしく振る舞え、どんなに些細なことでも話せたのは、心優しい同期のおかげだと思う。みんな、本当にありがとう。
 宮川ゼミの OB・OG の方、後輩にも謝意を述べたい。OB・OG の方には、ディベート大会で同じチームになった時、どんな些細なことでも質問したら私が理解できるまで説明してくださったり、就職活動に関するアドバイスなどをいただいた。後輩の研究には特に貢献することはできなかったが、一人で学情で卒業論文を執筆している時に話しかけてくれ、元気付けられた。
 最後に、ここまで何の不自由なく、学生生活を送らせてくれた両親に感謝申し上げたい。夜遅くまで大学に残っていたり、一人で旅行に出かけることを心配したが、最終的に私の意思を尊重してくれ、興味の赴くまま好きなことをさせてくれてありがとう。また、家事全般を卒なくこなし、家で快適に過ごせるような環境を作ってくれた。4 月から初めて一人暮らしを始めるが、より一層両親のありがたみを痛感するのであろう。 

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