論文要旨
本研究は、企業の販売促進活動である広告に着目し、広告による売上高への影響を、定量的に測定することを目的とした実証分析である。本研究では広告が売上高に対して正の影響を与えることを実証した。
広告は企業によるキャッシュ・インフローのための施策であり、企業は広告によって消費者に対して説得的情報を送ることができる。その説得的情報によって自社に対する需要や信頼を想像することで企業は売上高拡大を図るのである。しかし、広告活動には費用がかかり、費用以上に売上高を押し上げることが求められる。一方、広告の2007年から2019年の総支出額についてみると、企業は不景気の時に広告支出を削減することが確認された。また、広告予算の決定手法を見てみると、自社の売上高の実績や競合他社をベンチマークに設定し、それに合わせて広告予算を決定していることを確認した。
本研究では「企業の広告活動は売上高に正の影響を与える」という仮説のもと実証分析を行う。分析にあたって、重回帰分析を行い広告活動が売上高に与える影響を統計的に検証する。モデル式は被説明変数に今期売上高がどれだけ増加したかを表す売上高成長率、説明変数に前期にどれだけ広告宣伝費を増やしたかを表す広告宣伝費成長率をおく。また売上高は様々な要因の影響を受けるため、企業の好調や不調を考慮するために前期の売上高成長率、景気による影響を排除するために景気の成長率をコントロール変数に採用する。
研究対象は東京証券取引所一部・二部に上場している企業のうち、2008年から2018年の期間において売上高、広告宣伝費を欠損なく開示している企業で、東証業種分類における食品・不動産・小売に属している企業とした。この3業種にすることでサンプル内の企業の業種の偏りを抑えるとともに、十分なサンプル数を得ることが可能である。3業種の合計企業数は439社であったが対象期間において売上高と広告宣伝費に欠損がある企業を省いたところ分析対象は164社、1640サンプルとなった。
検証の結果、売上高成長率と広告宣伝費成長率の間に有意に正の相関が存在することが実証された。これは本研究の仮説を支持するものである。
あとがき
卒業論文のテーマのきっかけとなったのは三年生の時に行った企業分析でした。分析対象企業は BtoB 企業でありながら広告を活発に行っており、そのことに疑間を感じたのが広告について研究することのきっかけとなりました。テーマが決まってから夏休みは先行研究や本を読み込みました。先行研究は海外の論文がほとんどで、行き詰まる時もありました。しかし、それ以上に自分の中に新たな知識が入ってくるのが楽しく、前向きに研究を続けることができました。論文を実際に執筆する時には、章ごとに順序立てて論理的に書くということの難しさに直面しました。書きたいことは決まっているのにうまく書けないという状態が続いたこともありましたが、自分のやりたいテーマだったので何とか書き上げることができ、このことは私にとっては大きな自信となりました。
卒業論文の執筆を終え、今までの大学生活を思い返してみると、4年間という時間は長いようで短かったと感じます。特に宮川ゼミに入ってからは色々な出来事があり、本当にあっという間の2年半でした。これだけ前向きに勉強できて充実した日々を送れたのは宮川先生はもちろん、先輩、後輩、同期のみんなのおかげです。感謝の気持ちを述べ、本論文のあとがきとします。まず、ご指導いただいた宮川先生、本当にありがとうございました。宮川ゼミに入ってから、科学的思考論に始まり企業分析やCORE論文、毎週の輪講、卒業論文など様々な経験をすることができました。そのどれもが本当に掛け替えのない財産として自分の中に残っています。先生の指導があったからこそ、私はファイナンスの面白さ、答えのない問題に対して挑戦することの楽しさに気づくことができました。先生には何度も同じことを言わせてしまうこともありました。自分たちに真正面から向き合ってくださり、本当に感謝しかありません。先生には多くのアドバイスをいただきました。その中でも、特に印象的な言葉が二つあります。まず一つ目はプレゼンや輪講の時に仰っていた「自分の言葉で話す」というアドバイスです。自分の話す内容を聞き手に理解してもらうためには、相手のことを考えながら丁寧に自分の言葉で話す必要があるという当たり前のことを先生に言われて初めて気づきました。二つ目は「仕事って楽しいものだよ」という言葉です。先生は実務時代の話をたくさんしてくださいましたが、本当にどの話も楽しそうに語ってくださりました。仕事というのは向き合う姿勢次第でいくらでも楽しいものになるということを先生から学びました。これから卒業して社会に出ていく上でも先生の言葉を思い出しながら頑張っていきたいと思います。
また、2年間共に学んだ同期のみんなにもとても感謝しています。同期はまさしく戦友と呼べる仲間たちです。3年生の研究のメンバーとは毎日と言っていいほど集まって議論していました。チームのメンバーはそれぞれが自分の意見を遠慮なく発言してくれる、いいチームでした。意見がぶつかったり、まとまらない時もたくさんありましたが、全部含めて今ではいい思い出になっています。みんなと書き上げた論文で最優秀賞を取れたことは自分にとって大きな誇りです。ダイドーチームとは共に研究することはなかったものの、お互いの研究に対して外からの意見を言い合うことができる良い関係でした。学校に行くと同期の誰かがいるという状況は卒論を書く上で本当に支えになりました。
5期生6期生の先輩にもお世話になりました。ゼミに入ってすぐの頃、日経レポートで議論する先輩たちの姿にすごく衝撃を受け、「あんな風に議論できるようになりたい」と思ったのを今でもよく覚えています。一緒にいる期間が長かった6期生の先輩方はよく勉強している人が多く、本当に尊敬する先輩でした。卒論で忙しいところ、私たちの企業分析やCORE論文に意見をくださったり、食事に誘ってくださったり、よくしていただきました。本当にありがとうございました。
8期生は本当に素直で可愛い後輩です。食事にもよく誘ってくれ、この一年では同期よりも遊んだかもしれません。自分が先輩方にたくさんのことを教えてもらい、よくしてもらった分、後輩たちに色々してあげたいと思いながらも、逆に学情に行くと8期生がいる状況に助けてもらいました。これから4年生になれば卒論を書くと思いますが、とにかくコツコツと計画的に執筆することが大事だと思います。残された1年間は貴重なので、遊びも勉強も全力で頑張ってください。
最後に、両親に感謝の気持ちを述べたいと思います。自分が大学に通い、ゼミでの活動に専念することができたのは、ひとえに支えてくれた両親のおかげです。ありがとうございました。春からは大阪から離れたところに就職しますが、親孝行という形で少しずつ受けた愛情を返していきたいと思います。
私のゼミ生活は本当に多くの人に支えられていたということを再確認しました。これから社会に社会に出てもおそらく、多くの人に支えられながら生きていくことになると思います。そのことを忘れず、このゼミで学んだことを胸に刻んで、自信を持って社会に飛び出していきたいと思います。