論文要旨
本研究は、高い CSR 評価を得ることができる企業をテーマとした研究である。CSR(Corporate Social Responsibility)とは、社会的存在としての企業が果たすべき責任を意味する。日本経済団体連合は、CSR を企業活動における経済、環境、社会の側面を総合的に捉え、競争の源泉とし、企業価値の向上につなげるものとしてその重要性を述べている。
CSR は国や地域によって取り巻く社会の状況とともに発展を続けてきたが、現在 CSR は多様な分野をカバーする概念となっている。例えば、環境問題や雇用問題への取り組み、ガバナンスの強化、法令遵守などが CSR 活動として取り組まれている。ISO などの国際的組織や各国の政府が社会的責任についての規範等を提唱していることを背景に、多数の企業が CSR に取り組んでいる。
社会への影響力が拡大している企業が CSR に取り組むことの注目性や重要性は高まっている。そのなかで、CSR についてステークホルダー間の利害調整や、レピュテーションの向上などの効果があると述べている先行研究もあり、CSR の取り組みが企業価値の向上に結びつくことが期待されている。
このように CSR は盛り上がりを見せている。すると、企業の CSR の取り組みが格付けや点数付けにより評価されるようになった。しかし、企業の CSR の取り組みを明確に測定することは難しい。CSR には多様な活動が含まれ、そのひとつひとつを取り出し、社会への影響を綿密に分析することは困難だと考える。
しかし、現実として CSR 評価は存在する。そこで、高い CSR 評価を得ることのできる企業像を考察すると、一言でいうと余裕がある企業なのではないかと推測する。CSR は投資効果がわかりにくい。なぜなら、CSR には多様な活動が含まれており、その中には企業価値の向上と結びつかないものもある可能性があるためである。投資効果のわかりにくいCSR に投資するような企業は余裕のある企業ではないかと考え、余裕のある企業を表す指標を企業規模・収益性・安定性と設定して、CSR 評価点と実証的に分析する。
CSR 評価点のデータは東洋経済新報社の CSR 企業総覧から入手する。3 つの指標は、日経 NEEDS Financial QUEST から入手し、企業規模には資産対数、収益性には ROE、安定性には負債比率を代入する。これらを用いて重回帰分析を行うと、高い CSR 評価を得ている企業は、企業規模が大きく安定性が高いという結果が得られた。
あとがき
この卒業論文は、最後まで話の流れを書くのに苦戦しました。提出の直前まで問題意識や目的が自分の中で固まっていなかったことに気付いていなくて、論文全体を簡単に説明することができませんでした。そのため先生に相談しては全体的な訂正をしての繰り返しでしたが、最後までずっと丁寧に指導くださった先生にとても感謝しています。 論文は相手に自分の考えが正しいことを実証的に検証して納得させなければならないのに、私は相手に納得させるような説得力のある文章を構成させることができていませんでした。説得力のある文章を構成することと、なるべく客観的な事実をもと書くことの両立に苦戦しましたが、苦戦した分自分の成長につながったのではないかと大きな自信を感じています。
以上が卒業論文の感想です。以下で、これまでのゼミを振り返っての感想を書きます。 2018 年 11 月に私は宮川ゼミに入り、多くの時間をゼミ活動に割いてきました。初めて取り組む専門的な勉強が、ファイナンスでよかったと心から思います。企業に価値がついていると考えるととても壮大なように感じていましたが、その式はとてもシンプルでわかりやすいものでした。しかし、現実では企業価値を表す株価には様々な要因が影響を及ぼしていて、その複雑さを紐解くのが自分にとって興味深いものでした。企業分析や CORE・卒業論文では、自分に興味のある分野を取り上げて研究することができたので、楽しんで勉強することができました。
しかし、時には壁にぶつかることもありました。やる気を出さないといけないのに、どうにも気持ちが沈んでしまうことがありました。うまくいかない時期はどうしてもそう思ってしまいます。そのような時に研究室へ行くと、良いアイデアをもらったり、考えをうまくまとめてくださったりして、そのような悶々とした気持ちが晴れました。いつも研究室に行った後は、良いアイデアをもらっていたので、企業分析や論文の筆が進みました。また先生の言葉が私の背中を押してくださり、俄然やる気が湧き出てきました。今までゼミ活動を頑張ることができたのは、アドバイスだけではなく先生の熱意や優しさが、私を支えてくれていたからです。
今後も必ず壁にぶつかることがあると思います。しかし、真摯に私の相談に向き合ってくれる人や、丁寧に優しく教えてくれる人がいないかもしれません。それでも、他人のもとに足を運び、前向きな気持ちで学び続けなければならないと今は考えています。以前までは、わかる範囲内で精一杯頑張ろうという考え方でしたが、ゼミ活動を通じて変化しました。
わかる範囲内で精一杯頑張るという考え方ならば、しんどい時はありつつもどこか無責任で楽な気持ちになれました。しかし、狭い範囲では学ぶことも限られていました。一方でその範囲を広げたならば、その分失敗も増えますし、自分の足りないところをより実感することになるかと思います。企業分析や CORE・卒業論文は、手を抜こうと思えばそれなりのものになるし、逆にこだわろうと思えばどこまでもこだわることができました。こだわり続けることはしんどいですが、その分学ぶことがあることを実感しました。このような考え方が変わって良かったと心から思います。
2 年間を通じて、たくさんのことに取り組み、悩み、発見し、学びました。その過程すべてに何かしらの成長するものがあったと信じています。先生、本当にありがとうございました。
また、ゼミ生にも本当に感謝しています。一人一人が優しく、賢く、真面目な人でした。積極的にゼミに取り組む先輩や仲間からも、学ぶことがたくさんありました。尊敬すべき人がたくさんいる環境のなかで過ごせたことを嬉しく思います。特に 7 期生は、多くの時間を一緒に過ごしました。ほぼ毎日顔を合わせていたので、もちろん気持ちが沈んでいる時も一緒でした。明るく楽しくおしゃべりをしてくれた時間は私の心の支えになっていました。ありがとうございました。
たくさんの知識をつけ、いくつかの面で成長を遂げた一方で、たくさんの足りない部分に気付かされた 2 年間でした。かけがえのない、濃い 2 年間は一生の宝物です。ここで学んだことを初心として、この先長い人生を前向きに頑張っていこうと思います。先生、ゼミ生、最後になりますがありがとうございました。