試験監督をしていて気づいたこと

 後期末試験が終了しました。本年度後期に私が担当した専門科目「証券分析論」は 360人を越える履修者となり、試験会場が4教室に分かれたため他の先生方にも試験監督を手伝っていただきました。今期の証券分析論の試験は、スマホ以外は何でも持ち込み可にしたため不正行為の余地がなく、試験監督のお手伝いをいただいた先生方にも大きなご負担をかけることなく済みました。私は大教室の試験監督でしたが、私が作成した設問に真剣に取り組んでいる学生諸君の姿を見ていると、まだまだ大学教員駆け出しの私としては「こんな問題でよかったのかなあ」などと申し訳ないような気持ちに駆られます。
 私は、講義は出ても出なくてもどうでもよくて試験前に友達のノートをコピーして単位を取得するという歴史的に続いている日本の大学生の悪習を何とか断ち切りたいと考えています。ただし、出席点をつけるというのもこれまた悪習であって、出席して点数がもらえるような安易な採点方法も大学にはあってはならないと思っています。また、試験前に何かを暗記して解答用紙に再現させるような受験勉強型の問題形式も大学の定期試験にはふさわしくないというのが私の考え方です。講義に出席して得た知識を生かして、学生諸君に試験でも頭を使って考えてもらう、しかも、講義に出席しないと対応できない、そんな試験を考えています。なかなか難しいところです。そのような評価を行うためには試験だけではなく、むしろ毎回の講義を工夫することがもちろん重要です。出席点を見返りにするのではなくて面白いから出席するという内容にしなければなりません。毎回の講義が楽しみになるような、あるいは連続ドラマやトーク番組を見ているような気持ちにさせ、気づいたらすべての講義が終わっていた、という状態を目指しています。まだそこまでに達してはいませんが、今期の証券分析論は非常に出席率が高く、毎回立ち見が出るほどの満席状態を最後まで維持することができました。
 さて、試験監督をして気がついたことがあります。試験開始から30分経過すると途中退室が認められます。さすがに今回は30分で退室した学生はいませんでしたが、試験終了より前にちらほらと答案を提出する学生が出てきます。ちょうど教卓の前の席で試験を受けていた女子学生なのですが、答案を書き終えるとペンケースを片付け、実に丁寧に机の上の消しゴムの消しくずを集め始めました。器用に机の端に消しくずの山を作り、それをうまく手のひらに乗せてギュッと握り締めると、その手にかばんを引っ掛けて答案を提出して教室を出て行きました。おそらく教室外のゴミ箱に捨てるものと思われます。その様子を見て私は非常にさわやかな気持ちになりました。できることなら彼女の学籍番号を確認して加点してやりたいくらいです。
 ところが、そういう学生が意外と一人や二人ではないことに気づきました。問題用紙の縁を使って消しくずを収集し、問題用紙に消しくずを乗せたまま教室を出る学生、集めて作った消しくずの山をティッシュに包んで去っていく学生など、異なる流儀の「消しくず仕末人」が730番教室には次々と出没していることを発見しました。その姿は実にさわやかです。
 消しくず仕末人は主に女子学生ですが、感心することは、あくまで自然な一連の作業の流れで消しくずの仕末をやってのけている点です。ここが重要なのですが、それはあたかも試験終了後にシャープペンシルをペンケースに片付けるのと同様に、仕末人にとってはごくごく当たり前の作業のようです。「あらあらこんなに消しくず出ちゃったし。仕末しなきゃだわ。」というような表情を見せることなく、淡々と普通にシゴトをこなしている姿は、それが完全に基本動作として身についていることを表しています。一体どのようなしつけをしたら自然とそういう行動をとれるようになるのか、きっとそういう学生たちは何をやらせてもきちんとしているんだろうなあなどと感心をしながら仕末人たちが去っていく後姿を見送りました。
 ま、そんなワケですから、私がいくら感心しようと彼女たちにとっては当然のことなのでしょうが、さわやかな気持ちになり、またそういう学生が意外と多かったことで、私はますます大阪市立大学が好きになってしまった次第です。是非ともゼミ生諸君にも心がけていただきたいと思いました。

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